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NEURAL GP network 島根県発・総合診療医養成プロジェクト

感冒症状に対する潜在的不適切処方調査研究が発表されました

みなさんこんにちは!医学部6年生の中野です。この度、和足先生および調剤薬局のご協力のもと実施した「感冒症状に対する処方薬が国内外のエビデンスに準拠しているかに関する実態調査研究」が国際誌PLOSONEにPublishされました。

▼こちらから無料でダウンロードできます
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0265874

厳密な国際標準的なガイドラインなどを踏まえた上での感冒に対する医師の処方は、多くが潜在的不適切処方であることが分かりました。最近でこそ、コロナウィルスが蔓延することで、医師にも患者さんにもウィルス感染症である風邪に抗菌薬は不要と言われて理解が進んでいますが、未だなお経口セフェム、ニューキノロン系の抗菌薬の処方は根強く人気であり、基礎疾患や病歴、また患者さんが症状を否定する場合にも、適さない気管支拡張貼付薬の処方も多く見られました。また、多剤耐性菌の問題や、医療費の適正分配なども考慮していく必要があります。感冒症状に対して潜在的不適切処方が多い要因として、先行研究を加味すると以下が考えられます。


①患者が医師に薬を求めていること

②診察に対する医師のattitude(風邪処方に対する処方パターンの固定化、診察を早く終わらせたい等の心理)

③医師のプライマリーケア教育が不十分であること(臓器別専門医からプライマリケアのトレーニングを再度受けずに開業するなど)

④薬剤師の医師に対する心理的障壁(近医との良好な関係を望む薬剤師は頻回な疑義照会を躊躇するケースが多い)この問題には我が国の文化的要因も関係している可能性があり、医療者教育および患者教育を継続する以外の方法も必要であると考えられます。本研究が医療の質の改善の一助になれば幸いです。※ただし、本研究は地域レベルの予備調査であり外的妥当性は高くありません、今回のメソッドを用いてさらなる全国調査が必要ですので、今後も頑張りたいと思います。