地域だけではない、大学だけでもない、持続可能な成長をし続けるための総合診療ニューラルネットワーク

NEURAL GP network 島根県発・総合診療医養成プロジェクト

今奥出雲が熱い! 医学部5年山口柊

島根大学医学部5年の山口柊です。

町立奥出雲病院で開催された人材育成セミナー「全職員で学ぶ経営勉強会」に学生4名が参加してきました。

今回のセミナーの講師である、しまね総合診療センターの坂口公太先生に同行させていただきました。

奥出雲は出雲から斐伊川沿いを上流に向かって車で約1時間の場所にあります。途中山深い景色を通り抜けると、美味しい仁多米と奥出雲そばの産地である盆地が広がります。

雪もすっかり溶けて、暖かい春先の雰囲気を味わいながら奥出雲病院に到着しました。

初めての訪問でしたが、想像していた病院よりも大きく綺麗で驚きました。奥出雲病院は、奥出雲町周辺の約15000の人口をカバーしており、11診療科を持つ総合病院としての機能に加えて健康センターや訪問看護の役割も担っています。約100の病床に定員50名の介護医療院が併設しています。

「全職員で学ぶ経営勉強会」と題しているだけあって、セミナーには病院長や事務長をはじめ、病院中の部署から様々な職種の方が参加されました。

まずは5つのグループに分かれて自己紹介。初めてお会いする方ばかりでしたが、優しい笑顔で受け入れていただき、緊張も解けて和やかな雰囲気で始まりました。

ディスカッションのテーマは、経営危機に直面している架空の病院「ヤマタノオロチ総合病院」を題材に、病院長の視点に立って今後の経営方針をそれぞれ考えてみる、というもの。架空の病院のこととはいえ、地方の中核病院が抱えるリアルな現状と重なる部分もあり、具体的な経営改善案がいくつも挙がりました。

普段は経営者の立場で考える機会はありませんが、ケーススタディで客観的に組織を見てみると、“自分事“として考えることができると参加された方々はおっしゃっていました。リーダーに任せきりにしないフォロワーシップの大切さ、そして普段から職種や立場を超えてお互いの考えを共有できる場所を大事にしなければならないという学びがありました。

セミナーの後半は、「隣にいる人を信頼できますか?」というテーマのワークショップが行われました。目隠しをしながら4~5人のグループで輪になったヒモを持ち、できるだけ綺麗な円形にする、というなんとも面白い企画でした!

最終的に綺麗な円形にすることももちろん重要ですが、その過程で人の本質が分かるそう。積極的に声を上げて指示をする人、作戦にこだわる人、ぐいぐいヒモを引っ張る人…。

ヒモの引っ張り具合ひとつで円がガタガタになってしまうので、相手が見えない中でどれだけ他者への想像力を働かせ、信頼することができるかが問われます。私も看護師の方々とチームを組んで参加しましたが、声とヒモのテンションだけを頼りにするのは非常に難しく、四苦八苦しながらなんとか綺麗な円を作ることができました。

外野からみていると、「ぜんぜんきれいな丸になってないじゃない!」「〇〇さんが引っ張りすぎ!」「もっとこうすればいいのに」と意見を言いたくなるものですが、これは円=組織の只中にいる場合と似ていて、少し大きな視点で客観視してみないと組織の問題点に気付けないのだ、ということも同時に痛感することができました。

最後は奥出雲病院の強みを生かした病院の経営について、意見交換をしました。優しく笑顔に溢れたスタッフが多いこと、全部の患者さんの顔が分かる関係性であることなどを、多くのスタッフの方が共通しておっしゃっており、病院に対して誇りを持っているように感じられました。

数時間の滞在ではありましたが、すれ違うスタッフの方や患者さんが必ずにこやかに挨拶をしてくださり、奥出雲病院の温かさを私も感じることができました。

来年度の選択実習で1ヶ月実習させていただける機会があるので、素晴らしいチーム医療と地域に信頼される病院の在り方をもっと学ばせていただきたいと思いました。