地域だけではない、大学だけでもない、持続可能な成長をし続けるための総合診療ニューラルネットワーク

NEURAL GP network 島根県発・総合診療医養成プロジェクト

岩手からヘラルボニー矢野智美さん来雲

 

岩手からヘラルボニー矢野智美さん来雲

株式会社ヘラルボニーで岩手コミュニティマネージャーをしております、矢野智美です。3月14・15日に総合診療医センターに伺いましたので、感想を共有させて頂きます!

 出雲から1300キロあまり離れた盛岡に帰り1週間が経ちました。往復2600キロの移動を伴った講演は初めてで「きちんと移動できるだろうか」と講演よりも移動に緊張していました。濃厚な2日間。今も鮮明に覚えています。

 

改めまして、この度はお招きいただきありがとうございました。実は、弊社の問い合わせフォームにご依頼をいただいた当初、総合診療のみなさんと弊社の間にどのような交わりがあるのか想像が追いつかず「ご期待に添えるだろうか」という不安もありました。しかし、実際に島根大学の坂口先生や今岡さんとやり取りを重ねるうちに「できることがあるかもしれない」と考えるようになり、今回のご依頼をお引き受けさせていただきました。

 

 特に総合診療医センターの取り組みに興味を持ったきっかけは昨年の2月のことでした。ご依頼主でもある坂口先生が「2月の盛岡」という1年で最も寒い(一言で言うと最悪のコンディションの)時期にわざわざ足を運んでくださったのです。弊社のギャラリーではちょうどその時「ヘラルボニーと気仙沼ニッティング」という展示を開催していました。距離や寒さというハードルを軽々と超えている姿に感銘を受け、私も「1300キロというハードルを超えた出雲ではどんな世界が待っているのだろう」と、今回のご依頼をより自分事として捉えるようになりました。

 

 3月14日、島根にお邪魔しました。島根大学での講演のテーマは主に2つ「地域」と「ダイバーシティ」でした。私からは地域に根差して仕事をする意義をお話しました。会場に同席されていた方々からは「地域だからできない」でなく「地域だからできること」にフォーカスする点ついて共感いただきました。「ないことを、あえて生かす」という価値観にシフトチェンジすることは私たちが携わるビジネスだけでなく、総合診療を推進するにあたっても共通の課題なのだと感じました。

 講演では途中、参加された方々とのディスカッションがありました。講演者が言うのも変ですがが、回の肝は「講演」そのものではなく、この「ディスカッション」だったと思います。講演者という、いわばお客さんである私たちも出雲のみなさんと混ざり合い議論することで「どの組織にも課題があること」や「どの課題にも真摯に立ち向かう人がいること」を感じました。「同質性を避けた空間での議論によって、新たな気づきが生まれた」この瞬間こそ、今回の施策のキラッと輝く小さなダイヤの原石だったと思います。

 

講演翌日は、出雲の起業家コミュニティナースカンパニー代表、矢田明子さんとお会いしました。「今あるルールに従う」のではなく「地域に根差した新しいルールを作る」という姿勢に特に感銘を受けました。矢田さんの情熱と、地域に根差した暮らしから生まれた姿勢だと感じ、地域で事業を推進する新たなエンジンをいただきました。

 

島根滞在の終盤は、八百万の神々が集まる出雲大社を案内していただきました。初めての出雲大社。圧巻でした。カメラに収まりきらないほどの「大しめ縄」。青空に悠然とたなびく畳75畳分の「日の丸」。紙の上でしか想像できなかった二次元の神話の世界に実際に触れたようでした。

 準備期間を含めると約4ヶ月かけて実施された今回の施策。1300キロの距離や担当領域の壁を超え、「あえて異なる彩りを混ぜ合わせた理由はなんだろう」とずっと考えていました。出雲滞在を終え、上空で宍道湖を眺めていたときにふと思ったのは、島根大医学部付属病院総合診療医センターは複数の分野にわたる「総合診療医」を育てるための仕組みづくりを行うなど先進的な取り組みをされているからこそ「組織の同質性」における弊害に着目し、この講演を企画されたのかもしれないということです。実際にお伺いしているわけではないので、みなさんの真意はわかりませんが理由の一端を自分なりに見出せた気がしました。ご縁が繋がる地出雲で紡がれた奇跡が今後も新たな奇跡を生むきっかけとなることを願っています。今回の企画に携わっていただいた皆さまに感謝いたします。

ヘラルボニー岩手コミュニティマネージャー 矢野智美