地域だけではない、大学だけでもない、持続可能な成長をし続けるための総合診療ニューラルネットワーク

NEURAL GP network 島根県発・総合診療医養成プロジェクト

田中勇成 同志社大学法学部政治学科 4回生 

1: 自己紹介となぜ島根に?   

 私は広島県出身で、現在同志社大学法学部政治学科に通っております、田中勇成と申します。2024年4月から4回生になる予定でしたが、半年間休学し、地域医療を支援する事業者でインターンをしておりました。

島根とのご縁は、医療政策を学んでいた際に坂口先生に出会い、島根の総合診療養成について興味を抱きました。昨年も訪問させて頂き今回は2度目になります。島根県の医療機関を今回訪問させて頂いたのは、「地域医療の課題」に対する理解を深め、具体的な解決策を提案できるようになりたいと考えたからです。   

 地方創生を実現する一つのステップとして、私は地域医療の課題解決に強い関心を持っています。 地方創生に興味を持つようになったきっかけは、地元広島県が「転出超過全国ワースト1位」というニュースを見たことです。

私自身、学業のために広島を離れ京都にいるほか、周りにも同じような境遇の人が多くいたので、広島がある程度転出超過していることは予想していましたが、「ワースト1位」という事実には衝撃を受けました。  

また、そのニュースの中で、広島を離れる理由を尋ねられた若者が「広島は好きだけど、夢や目標を実現するために東京や大阪、福岡に出ようと考えている」と答えていた姿が印象的でした。 このニュースをきっかけに、私は「広島を自己実現できる街にする、活気のある街にする」という目標を真剣に志すようになりました。   

 地方創生は「まち・ひと・しごと創生法」において、「国民一人ひとりが夢や希望を持ち、豊かで潤いのある生活を安心して営める地域社会の形成、そして地域を担う個性豊かで多様な人材の確保、さらに地域で魅力ある多様な就業機会の創出を一体的に推進すること」と規定されています。「住み慣れた地域で自分らしい暮らしを実現するためには、地域の医療・福祉体制の整備が不可欠」という考えに基づき、私は地域医療の課題解決に強く関心を抱くようになりました。   

 現在では、広島への想いを原点に、広島に限らず「住み慣れた地域で自分らしい暮らし」を実現できる地域社会が、日本各地に持続的に存在することが重要であると感じています。このような背景から、まずは広島県の隣県である島根県を訪問させていただきました。 

2: 浜田旭診療所/江津を見学してみて   

 まずは、あさひ診療所の皆様、済生会江津総合病院の皆様、温かく見学を受け入れてくださり、誠にありがとうございました。普段は見ることができない医療提供者側の現場を見学できたことは、非常に貴重な経験となりました。   

 「医療アクセスの悪さ」や「医療従事者の不足」といった地域医療の課題は、これまで厚生労働省の文書や政治家のスピーチを通じて耳にしてきましたが、これらの問題を実際に現場で感じることができず、もどかしさを感じていました。 課題を一次情報として捉えられるようになると、第三者に説明する際により具体的でわかりやすい説明ができるだけでなく、課題解決に向けた提案を行う際にも、現場の実情に即したより実践的な提案が可能になると感じています。   

 インターンを通じて、全国500以上の自治体や地域社会と関わる中で、多様なステークホルダーとの意見調整の重要性を強く感じました。これを円滑に進めるためには、上記の「具体的な説明力」と「現場に即した提案力」の2つの能力が不可欠であり、その能力を養うために一次情報に触れることが、私にとって今必要な行動であると考えています。   

 実際に医療機関を見学することで、「医療アクセスの悪さ」という言葉が、自宅から診療所まで往復4kmの道のりを、6kmしか走れないバッテリーを持つシニアカーで通うことへの不安を表していることや、「医療従事者の不足」の背後に「病院経営を健全にするために病床稼働率を上げたいが、それができない」といった問題が存在していることを知ることができました。この見学を通して、地域医療の課題に対する理解をさらに深めることができるとともに、課題にはそれに関連するさらなる課題があるという新たな認識を得ました。 

3: 最後に一言   

 改めて、外部かつ非医療従事者である私に、医療提供現場の最前線を見学させていただいた皆様に心から感謝申し上げます。 また、昨年の医療政策アカデミーでお会いして以来、親身にご指導くださっている坂口先生には、感謝の念が尽きません。  

 これからも、明るい地域社会と日本の実現に向けて邁進してまいりますので、引き続きご指導・ご鞭撻のほど、何卒よろしくお願い申し上げます。