地域だけではない、大学だけでもない、持続可能な成長をし続けるための総合診療ニューラルネットワーク

NEURAL GP network 島根県発・総合診療医養成プロジェクト

明日香村探訪記

 信頼され、医療活動を広げていく。地域で働く中堅医師の誰もが、ここの越え方に悩むところでしょう。この壁の前で、もがく遠藤は、奈良県明日香村へ伺いました。

明日香村は人口5,082人、高齢化率36.6%(明日香村 公式ホームページより:2024年9月8日閲覧)。


 お会いしたのは、赤ひげ大賞の武田以知郎先生。「人を大事に、チャレンジは大胆に」、と地域医療を展開されていました。下記、ご報告します。

2024年8月27日〜28日訪問 報告者:遠藤健史

*1. 武田先生の役割と診療内容

 武田先生は、市立奈良病院で副管理者を務めた後、50歳で一念発起し、明日香村診療所で勤務を開始されました。武田先生のモットーは「縮小すれば尻すぼみ、チャレンジが先」です。村長や健康づくり課と連携し、将来の構想を共有し、また村内の医療介護が一体になっていろんな選択肢を提供できるトータルケアステーションに向けて検討会を重ねています。

独自の「ドクターイチローブランディング」により、1日10人しか受診しなかった診療所を再構築し、「そうだ診療所へ行こう」の合言葉で、診療所周辺への健康福祉のセンター化を成功させ、同時に診療所が人々をつなぐHubとなってきました。

 写真:診療所には、個人&団体が常に活動できる場が併設される

診療所の外来診療では1日40-50人、加えて、予防接種、健康診断など多岐にわたる業務を担当されています。また、特別養護老人ホームの嘱託医(産業医)を兼務し、デイサービスとの連携も強化してきました。

*2. 組織のビジョンと人材活用

明日香村診療所は、新プロジェクトに積極的に取り組み、業務拡大と人員増加を実現してきました。不足する力を補うべく、最近さらに、コミュニティーナース兼心理士兼尼さんや、看護師1名、運動指導する理学療法士を診療所で新規採用しました。すると不思議と、それに伴い、受診者数や業務量は増えてきてきたそうです。
現在までに武田先生が指導した医学生が100人以上、総合診療へと進んだ医師も10人を超え、育った医師が今度は武田先生を支えてくれています。

*3. 今後の計画

武田先生の夢は、診療所を建て替え、医療介護の連携拠点を築くとともに、コミュニティーナースの拠点としてのナーシングカフェや、総合診療医の養成や在宅看護の教育機関などを整備し、周辺の地域医療教育の拠点となることを目指しておられます。

診療所を建て替え、より多様な機能の強化をするため、検討会議を重ねておられます。活動を多角的な視点で見るため、奈良県立医大の総合診療科、疫学・予防医学の教授らとも、連携しておられます。

 

 写真:明日香村役場での会議に向かう武田先生

編集後記:

 診療所を飛び出せば、90分で明日香村を一周。各地の人と話し、会議でも人に囲まれる。武田先生といると、たった2日で明日香村の医療と文化を見渡すことができます。武田先生、お忙しい中、見学の受け入れをありがとうございました。