長谷毛原診療所 見学記 2026年初春
― 根拠を示し、安心感を届ける姿勢 ―
1.紀美野町立長谷毛原出張所・診療所
この診療所は、山の谷間にあります。所長は、自治医科大学卒、医師15年目の多田明良(ただあきら)先生です。エコー(超音波診断装置)を活かした多田先生の診療スタイルを学ぶため、見学に伺ってきました。
2.診療の実際 ― エコーを用いた評価
外来・訪問診療を見学し、印象に残ったのは、1つ1つ確認を怠らない多田先生の丁寧さでした。エコーは、確認に用いる評価の一つとして用いられています。たとえば腹痛を感じる患者さんには、エコー画像を示し、その映像と触診と組み合わせることでその部位にある臓器をリアルタイムに確認していきます。これにより、何の臓器が発痛源か患者さんと情報共有しながら診察を進められます。

この姿勢は訪問診療でも変わりません。訪問先の玄関でもポケットエコーを取り出し、患者さんの背中に当て「胸に水はたまっていません。今のお薬をきちんと続けていただければ大丈夫です」と、情報取得だけでなく、患者さんが納得されているかを確認しながら進めていました。
そして、現行薬が適切かを考える際には、残薬の確認が重要で、ここでも1剤ずつの確認です。その際、患者さんやそのご家族さんと共に確認していくことで、残薬がある原因は、飲む時間帯や一包化の問題だろうか、と共に悩みます。また、薬を丁寧に数える姿を見せることで、「この薬は重要ですよ。飲んでくださいね」と念押ししていくことも忘れません。

ともに診療を支える看護師さんや事務スタッフの皆さんも、検査や処方に間違いがないか、1つ1つ指差し確認をされていました。きちんと確認する、丁寧に説明するといった多田先生の誠実な態度は、この診療所に育まれてきたものだと感じました。長谷毛原診療所で拝見したのは、技術に裏打ちされた、きちんと確認する地域医療の実践でした。

3.生活に近づく
訪問診療の途中、ニホンカモシカに遭遇しました。じっとこちらを見つめていました。

この地で勤務10年の多田先生も「初めて見た」とのことでしたが、診療所の事務の方は、「よく庭を歩いていますよ」とのこと。生活に寄り添う医師でもこのように地域の知らないことはまだまだあります。
医療は生活の脇役であり、実は生活からは遠い存在です。地域住民にとって当たり前のことは、しばしば医療者にとっては見落とし情報となります。患者さんにとっての当たり前を丁寧に拾うため、もっと患者さんの生活に近づくべきだと、ニホンカモシカに教わりました。
