ミシガンからこんにちは。みなさま、お久しぶりです。お元気でしょうか？

総合診療医センターとしてどうしても、どうしても発表したかった研究成果がようやく公表されましたので、こちらでも紹介させてください。

これは全国の研修医に対して実施された基本的臨床能力評価試験GM-ITE(2021年1月18日-3月31日実施)の結果と研修医の志望診療科との比較解析論文になります。

島根県の研修医はほぼ全員受験していると思いますが、この基本的臨床能力評価試験は初期臨床研修の到達度を評価するために作成された内科、外科、小児科、産婦人科、精神科、救急、総論（医療面接・プロフェッショナリズム）の分野から出題される合計80問の臨床問題から構成させる2時間のC B T試験になります。

GM-ITEの点数配分は総合スコアと、臨床知識を評価する4領域(1）医学的面接と専門性、(2）症状学と臨床推論、(3）身体検査と治療、(4）詳細な疾患知識の評価で構成されており、海外の試験と比較しても試験の妥当性も確認されています(引用２)。

さて、今回はその試験を用いて、初期研修医の志望する将来の診療科と初期研修医期間中の臨床能力評価の到達度との関連をみました。

志望診療科は専門医機構が提示する19基本領域(加えて未定と特定のプログラムに乗らないが示されています)と合計4,363人の研修医が分析の対象となりました。

前述した総合得点と前述した4領域の平均点を単純にヒートマップで示したものを図で示します。

赤は得点が高いこと、青は低いことを示しています。総合得点では総合診療科志望の研修医が最も高く概ね４領域でも高い傾向がありました、ついで救急科、内科、脳外科、産婦人科と続きます。これらの志望診療科の研修医は有意に当直数や自己学習による勉強時間が多いことが確認されたために研修医の所属する施設環境(勤務状況、当直数、担当患者数など)と個人レベルでの要因を従属変数に多変量解析も実施しました。

結果として、得点が高く最多の集団である内科志望者をリファレンスとした場合でも全国的に総合診療科志望者が最も高く、高度に専門分化した診療科（皮膚科、眼科、耳鼻科等）を志望する研修医ほど有意にスコアが低いことが明らかなりました。これはもちろん将来の志望診療科毎に得意・不得意、（おそらくは興味ある無しの問題）があることが予想されます。サブ解析は志望診療科により勤務時間数や当直数、患者担当数などの実労働状況の増減することも個別の研修医にとって何が良い研修か考えさせられるものでした。

他の特徴として、総合スコアは病床数が多く、非大都市部の地域病院で研修を受けた研修医、勤務や勉強に多くの時間を費やしている研修医ほど高い傾向が認められました。

この研修医の志望診療科毎により基盤データは、今後の研修病院のプログラム立案、研修環境の整備、研修医の将来を考慮した上での教育の提供などに活用できればと思います。

今後も総合診療医センターとして我が国のエビデンスを次々に発表していく予定です。

引用

１）Watari, T., Nishizaki, Y., Houchens, N. et al. Medical resident’s pursuing specialty and differences in clinical proficiency among medical residents in Japan: a nationwide cross-sectional study. BMC Med Educ 23, 464 (2023). https://doi.org/10.1186/s12909-023-04429-4

２）Nagasaki K, Nishizaki Y, Nojima M, Shimizu T, Konishi R, Okubo T, Yamamoto Y, Morishima R, Kobayashi H, Tokuda Y. Validation of the General Medicine in-Training Examination Using the Professional and Linguistic Assessments Board Examination Among Postgraduate Residents in Japan. Int J Gen Med. 2021 Oct 7;14:6487-6495. doi: 10.2147/IJGM.S331173. PMID: 34675616; PMCID: PMC8504475.