地域だけではない、大学だけでもない、持続可能な成長をし続けるための総合診療ニューラルネットワーク

NEURAL GP network 島根県発・総合診療医養成プロジェクト

グロービス 山中礼ニ先生 来雲

総合診療医センター坂口です。

グロービス経営大学院というところで私は経営学について学ぶ機会がありました。

そこで、受けた授業の中で山中先生が教えてくれた内容をとても印象的であり、現在の私に活動につながっています。

社会課題を見つけ志や情熱を持って取り組み始めるが、資金や人間関係、さまざまな要因で挑戦が途絶える事があります。決して無駄な一歩ではないですが、社会課題に対して持続的かつ経済性を持って取り組むにはどうしたらいいのか?

そのな悩みを持ちながら、山中先生と対話する機会を頂きました。

以下、山中先生からレポートをいただいたので共有いたします!

【島根県のヘルスケア・フィールドワーク】

木・金曜日と島根県の各所を回り、医療・介護の状況についていろいろな方のお話を伺いました。地域医療を支える若い医師、そして若きリーダー達が生まれ、しかも横につながり連携していました。

今回私を案内してくださったのは、島根大学の坂口先生、よしか病院副院長の佐々木先生、そしてあさひ診療所の邉田先生です。坂口先生はグロービス卒のMBAで、佐々木先生と邉田先生は在学中です。

佐々木先生は、島根県の吉賀町出身です。島根大学を出て、神奈川県の病院の救急医(ER)として活躍していましたが、地元の島根県吉賀町のよしか病院に戻ることを決めました。現在病院の副院長として、病院の経営改善に汗を流しています。

佐々木先生のような「地元に貢献する医師」を育成する仕組みが、島根にはあります。島根大学は高校生向けにレクチャーをして、地域に貢献する医療の素晴らしさを伝えています。そして高い志を持つ若者を島根大学医学部に呼び込む奨学金(地域推薦枠)があります。将来的に地元に帰って働けば、奨学金は返済不要となります。

横に細長い島根県。各市町村の病院が、専門医を抱える財政的余裕はなかなかありません。患者さんの多種多様な悩みに対応する「総合診療医」が、患者さんたちの健康を最前線で支えています。この総合診療医というキャリアを選ぶ人の割合が、島根県では15%と高いのです。どうしてでしょう?

その背景には、医学部の学生を全員、地域医療の現場に送り込む研修制度があります。また中山間地域や離島で働くことの楽しさを体現し、積極的に発信している医師がいます。また各地域で活動する若手の総合診療医が緩やかに(あたかも神経細胞のように)つながり、互いに情報を交換しあう「neural-GP network」というものがあります。(坂口先生は、このネットワークのハブ的な役割を果たしています)この活動は、2024年のグッドデザイン賞を受賞しました。

地域医療の担い手を持続的に生み出す「仕組み」がデザインされていて、しかもその担い手たちが楽しそうにいきいきと働いていることに、衝撃を受けた2日間でした。

ここまでポジティブな話をしてきましたが、島根県の医療には「苦しい」現場もあります。NHKスペシャルの「限界医療」をご覧になった方は、島根県の病院が医師不足、看護師不足で限界まで追い込まれる現場をご覧になったかと思います。診療科を閉鎖し、病床数を減らし、ギリギリ成り立つ体制を再構築しようとしています。無責任な売却・撤退が許されない果てしない戦いが続いています。

それでも、そこには「希望」の芽もありました。各医療機関で経営再建に汗を流す若きリーダーたちは横につながっています。グロービスに通う人も増えています。

また雲南市のように、医療機関ではなく「コミュニティ・ナース」が主宰する形で、地域住民の健康状態について話し合う会議体を設けているところもあります。(地域おせっかい会議)保険医療を超えた取り組みが始まっています。

地域内の人たちが連携を取り合い、助け合い、健康を気遣うことで、結果的に(病院にかからずとも)健康を維持できるというCommunity-driven healthcareが、島根では成り立つのではないかという希望を持ちました。

地域の方々の健康を「私が守る」という担い手たちが次々に立ち上がっている様子は、まさに「地上の星」という印象を受けました。