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NEURAL GP network 島根県発・総合診療医養成プロジェクト

学会を振り返って 医学部6年大塚友絵

島根大学医学部6 年の大塚友絵です。

日本病院総合診療医学会( 2023年2月18日-19日)に参加し、研究発表をさせて頂きました。

そこでの活動報告をさせていただきたいと思います。

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目次

①発表内容について

②研究の大切さ

③学会っておもしろい!

④若いうち・未熟なうちに色々挑戦する!

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  • 発表内容について

今回は「日本における医師と看護師の共感の比較」をテーマに発表させて頂きました。

このテーマを取り上げたきっかけは、「医師の世界を患者さんに優しいものにしたい」そのような思いが私にはあったからです。

私は、医学部に入る前は看護の大学に所属していました。

看護の大学の講義では、患者さん目線で考えることや、患者さんの気持ちを汲み取ることを大切にするよう教えられていたので、病院実習中の(一部の)医師を見た時に

「患者さんをみているというよりは病気をみている」

という印象があり、そのことに対してずっともどかしさがありました。

実際に自分が医学部に入って講義を受けてみると、「こんなに疾患の勉強ばかりなのか」と感じました。そして、これでは確かに病気のことばかりに目が行きがちになるなと納得しました。

現在のカリキュラムや医学教育に不足している部分があると感じ、どうにかしたい、どうしたら良いのか、そのような悩みを抱えておりました。そこで、総合診療医センターの和足孝之先生に相談させて頂きました。

そのような経緯を経て、実現したのが今回の調査になります。この調査は、日本の医師と看護師の共感を比較したものであり、自分が感じたクリニカルクエスチョンを実際に検証したものとなりました。調査の詳しい内容については、これから論文に投稿予定ですので、またそちらも読んでいただけると嬉しいです!

今後の研究活動の最終的な目標としては、医師の卒前・卒後教育や医師の職場改善などに働きかけることで、「医師の世界を患者さんに優しいものにしたい」これを実現出来たらと考えています。

  • 研究の大切さ

学会のセッションの中では「総合診療医のうち何%が研究を行うべきか」という問いがありました。その中でのある先生の回答としては、「目標としては全員がすべき。大規模な調査研究でなくても、臨床医として症例報告などに取り組むことは必要」と仰っていました。

私はこの回答にとても納得しました。その理由としては、今回実際に自分で研究に取り組んだことで、①論文を読むことに抵抗がなくなった

②以前よりも統計が少しわかるようになった(これからまだ勉強は必要です)

③日常の臨床現場でクリニカルクエスチョンが浮かびやすくなった(つまり課題が見えやすくなった)

④臨床で必要な情報を調べられるようになったなど、沢山のメリットがあったからです。

そして、仮に臨床しかしないのだとしても、論文から情報を収集する能力は必要ですし、統計などの基本的な知識は必要になります。それらを習得するためには、実際に自分で研究をやってみること、そしてつまずくこと!これが一番早くて確実だと感じました。

情報統計学などは、大学の講義の中にも組み込まれています。しかし、教科書で勉強しただけでは、内容は中々入ってこないものです。自分でやってみて、つまずく。そしてとにかく調べる。このサイクルが自分を成長させてくれるように感じます。したがって、研究マインドを持つことは、研究を中心に行っている医師だけでなく、全ての医師に対して求められると感じています。

私は来年から研修医になりますが、これからも研究マインドを持つことを意識したいです。

  • 学会っておもしろい!

今回は、自分が興味を持って取り組んでいたテーマを初めて他の先生方の前で発表させて頂きました。発表が終わると、多くの先生方が質問してくださいました。自分としても新しい気づきがあったのとともに、初対面の先生方がこうしてこのテーマに興味を持ってくださるのがとても嬉しかったです。そして新しいご提案などもいただき、このように研究がブラッシュアップされていくのか!と体感でき、とても良い経験になりました。

そして、面白い!それをやってみたらどうなるんだろう!と知的好奇心がくすぐられ、これからの研究のモチベーションにも繋がりました。

このような経験から、研究においては年上だとか医師何年目だとかは関係なく、皆が平等に意見を言い合うことや高め合うことが大切だと感じました。そして日本病院総合診療医学会では既にその空気感があり、今回は学生としての発表でしたが、萎縮することなく伸び伸びとやらせていただくことが出来ました。こういった雰囲気作りも、研究においては重要になると思います。研究は思っていたよりも気張る必要はなく、分からなければ分からない!と周りに助けてもらいながら、少しずつ成長していけたら良いのかなと考えています。

また、他のセッションで初期・後期研修の先生方の発表を見られたのも、とても良い刺激になりました。自分も近い将来、これくらい出来る必要があるのだなと思うと、気が引き締まりました。自分が発表準備で悩んだことがあるからこそ、それを上手にやられている様子を見て、非常に勉強になりました。ここでも改めて、まずは自分でやってみることが大事なのだなと感じました。

  • 若いうち・未熟なうちに色々挑戦する!

今回、私が発表させて頂いたのは「大規模調査研究」の部門だったので、私の前には教授など、大御所の先生方の発表が並んでいました。(この後に発表するのかと思うと、ひそかに顔がこわばっていました。)また、私の前の先生方の質疑応答では、統計的に難しい質問も多く飛び交っていたので、私の質疑応答はどうなるのだろうとドキドキしておりました。

ですが、実際に自分の発表になると、座長の先生が「おや、学生さんですかね」と気付いてくださり、そのように紹介してくださいました。そのおかげで、会場の雰囲気も「今からは学生の発表か、柔らかめにいこう」となり、私が発表しやすい雰囲気を会場の皆さまが作ってくださいました。質疑応答でも私が理解しやすいように、一つずつ質問してくださったり、難しい言葉を使わないで質問してくださったりと、皆さまの優しさを感じました。

このような経験を経て、若いうちや未熟なうちなら失敗しても怖くないし、周りの先生方が優しくサポートしてくださるという心強さを感じました。これが医師10年目での発表だったら、いくら初めての発表だったとしても、このような空気感にはならないだろうと思います。若いうちは失敗しても大丈夫だから、怖がらずに飛び込む。こういった精神が今後大切になってくるのではないかと思います。

「学会発表なんて医師になったらいずれやるし、今やる必要はないだろう」

そういった考え方もあるとは思いますが、私は今の段階で経験させて頂いたことに大きな意義を感じています。来年から研修医になり、初めて取り組むことが沢山ありますが、未熟なうちに沢山挑戦して沢山失敗しておきたいと思います。

最後になりましたが、今回の学会発表の準備をサポートしてくださった皆さまに心より感謝申し上げます。ここでの経験が活かせるよう、今後もより一層努力したいと思います。

島根大学医学部6年

大塚友絵